
Sinful thread
第2章 喪心
「昨日、どうしたんだよ?」
葵の問いに、ドキッとする。
泣いてたの、バレてたのかな……?
「希美すぐ部屋に帰っただろ。芽依が心配してたぞ」
……なんだ、あの女か。
別に、心配なんか要らないのに。
「別に、なんでもない」
つい、素っ気ない態度になる。
……もう考えたくもないのに、無意識のうちに彼女のことばかり考えてしまう。
今日もきっと、職場で会うんだろう。
葵は妹のあたしなんかと付き合うより、今の彼女と付き合ってた方が確実に幸せだ。
それが分かった上で彼女から葵を奪い取る勇気も器量も、あたしにはない。
……もうほんとに、諦めるしかないのかな。
