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Sinful thread

第2章 喪心



「……会いたくない」


つい口から溢れてしまった。
言うつもりはなかったのに。

こんなこと言ったって、奏多を困らせるだけなのに。


「まあ、そうだよな。辛いよな」


「……でも、頑張って帰るよ。ほんとにありがとう」


もうこれ以上心配をかけたくない。
迷惑もかけたくない。

……なのに。


「辛いなら俺んち来るか?」


奏多は思いもよらない手を差し伸べてくる。


「……え」


「心配すんな。友達に手は出さねぇよ」


その言葉に、あたしの中で迷いが生じる。
そんなあたしを見て、奏多が言葉を続けた。


「言ったろ?遠慮しなくていいから。もし帰るんだったら送ってくし」


大丈夫。ちゃんと帰るよ。

そう即答するべきなのに。
……言えない。

そのくらい、あたしの胸は強く痛みを訴えてくる。
自分で思ってる以上に、傷は深いのかもしれない。


「……れてって」


「え?」


「奏多の家……。連れてって……」


気づけばあたしは、そう言葉を溢していた。





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