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Sinful thread

第2章 喪心



「狭いけど、適当に座って」


───奏多と一緒に家に帰り、リビングに通された。


流石に大学生の一人暮らしというだけあって、葵の家ほど広くはない。

でもどうやら新築らしく、十分に綺麗な部屋だった。


「うん」


部屋に敷かれたベージュのラグの上に腰を下ろすと、奏多がペットボトルのお茶を2本持って来てくれた。


「ちょっと今日飲みすぎたな」


ペットボトルを開け、奏多は美味しそうに喉に流し込んでいく。


「ありがと」


「ほんとにいいのか?葵さん心配してないか?」


葵には、友達の家に泊まるってメールを送っておいた。

……嘘ではない。
奏多だってちゃんと友達だし。


「大丈夫。こっちこそごめんね、急に」


奏多の優しさに甘えてしまったけど、でも、今のあたしにとっては本当にありがたい。


葵からの返信は見ないまま、あたしはそっとスマホの電源を切って、バッグにしまった。




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