
Sinful thread
第3章 愛欲
「……希美……?」
あたしの顔を見た葵が、開いた目を更に大きく見開いて、身体を起こす。
「……お前、今まで何してたんだよ」
予想していたのとは裏腹な、落ち着いた口調。
でも、静かなその言葉の裏に、確かに怒りを感じる。
「……ごめん。友達の家に泊まってて……」
「それはわかってんだよ。なんで連絡返さねぇの?」
決して声を荒げることはない。
静かに怒りを現す葵を目の前に、昨日からたった今までの自分勝手な自分を、責めたくなる。
「俺がどれだけ心配したかわかるか?」
葵の前で涙は見せたくなかったのに……。
申し訳なさで、あたしの涙腺は緩み始める。
「……ほんとに、ごめんなさい……」
「……こら。泣くなよ」
小さなため息とともに吐き出された葵の言葉に、涙を見られまいと下を向く。
「こっち来て」
葵があたしの左腕を取り、引っ張る。
そのまま、あたしをソファの上に座らせた。
