
Sinful thread
第3章 愛欲
背中に回した両腕に、更にギュッと力を込める。
それに応えてくれる葵の力強い両腕が、堪らなく嬉しい。
「……あのね、あたし……」
ちゃんと伝わるかはわからない。
……伝えたところで、葵がどう思うかもわからない。
でも、昨日気付いてしまったから。
葵の所為で空いてしまった心の隙間は、葵じゃなきゃ埋められない。
「……葵のことが……」
「希美、待って」
……なのに。
想いを告げようとしたあたしの言葉は、葵によって静止された。
「……それ以上は、言うな」
きつく抱き締めたまま、葵は切なげに言葉を溢す。
「なんで……」
どうして、言わせてくれないの?
最初から、葵と付き合えるなんてことは思ってなかった。
だけど、付き合うとかそんなことの前に、想いを伝えることさえ許されないの……?
