
Sinful thread
第3章 愛欲
……きっと、こんな形で葵と出会ってしまったあたしの運命を、これ程までに恨んだことはない。
もどかしい。
葵は、こんなに近くにいるのに……。
「……希美、わかるだろ……。俺たち……」
今更になって、「兄妹」という壁が、重くのしかかる。
あたしたちはこのままずっと、兄妹の壁を越えることは出来ないのだろうか。
伝え切れない想いが行き場を失い、涙へと変わる。
一度止まったはずの涙が、あたしの意思なんか関係なく頰の上を流れ落ちていく。
「……頼むから、もう泣くな」
葵の切な気な声が耳に響く。
心が交われないのなら、せめて……身体だけでも葵と繋がっていたい。
葵の温もりを感じていたい。
……出来ることなら、今よりももっとずっと、奥底まで───。
「……ねぇ、葵……。今夜だけでいいの……」
「なに……?」
「お願い……。あたしを抱いて……」
……震える声で口にしたそれは、“お願い”なんて可愛いものじゃない。
もはや、懇願に近かった。
