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Sinful thread

第3章 愛欲



あたしの言葉を聞いた葵の腕が、力なく落ちていく。


「……やだ。葵……」


離れていく葵の身体を繋ぎ止めたくて、自分から手を伸ばす。


「……お前、本気で言ってる?」


伸ばしたその手は、葵の手に阻まれた。
見たこともないくらい真剣な顔した葵の顔が、目の前にある。


「……本気だよ」


あたしは震える声のまま、か細くそう言葉を零した。


真剣な顔であたしを見据えていた葵が、視線を落として俯いた。


「さっき言ったよな?……俺らの関係、わかってんだろ?」


「わかってるよ。でも……」


兄妹だから、彼女がいるから、というだけじゃ諦めきれない。
あたしの胸を支配してるのは、そのくらい強い想いだ。


「お前、一回風呂でも入って来い。
……それで一旦、ちゃんと考え直せ」


少しの沈黙の後。
そう言って葵はソファから立ち上がった。


「それでも、どうしてもお前の気持ちが変わらないなら……その時は俺の部屋に来て」


葵の身体が離れていく。
もう、手を伸ばしても届かないところまで。

……葵の部屋のドアが閉まるのを、あたしは潤んだ瞳で見つめ続けていた。



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