
Sinful thread
第3章 愛欲
───あたし1人だけのバスルームに、水音が響く。
さっきのことがぐるぐると頭の中を渦巻いて、あたしのため息が水面を微かに揺らす。
……葵は、ずるいよ……。
お風呂入ってなんて……どうしてそんな台詞を残すの。
ダメなら、ちゃんとダメだって突き放してくれればいいのに。
なんで、選択肢を用意するの……?
葵の部屋に行くか、行かないか。
そんなの幾ら考え直したところで、変わるわけはないのに。
葵はあたしに2択を与えたつもりで、実際選択肢は1つしか残してない。
湯船から出て、いつもより念入りに身体を洗ってみる。
……正直、どうなるかはわからない。
もしかしたらあたしが期待してるような状況にはならないかもしれない。
シャワーで隅々まで綺麗に洗い流すと、あたしはバスルームを出た。
……葵はまだ、起きてるだろうか。
そこまで、時間は経ってないはずだけど……。
そう思うと気持ちが逸って急いで髪を乾かすと、バスタオル1枚だけを身体に纏い、葵の部屋に向かった。
