
Sinful thread
第4章 追想
『あっ葵、の……希美だけど……』
約束していた、午後3時。
妙にうろたえた希美がインターホンに映る。
……俺たち、ほんとに一緒に住むんだな。
今更になって、そんなことを思った。
内心俺も、胸がドキドキしてる。
それでも平然を装って、リビングへと招き入れた。
何日か一緒に過ごすうちに、そうやって平然を装うことにも、限界を感じ始めた。
『芽依、今日妹の帰り遅くなるらしいから、俺んち来いよ』
だから。
あの日、俺の家に芽依を誘った。
……希美には彼女がいることを伝えてない。
希美に芽依を紹介することで、俺自身、そして希美も、気持ちの整理ができるかもしれないと、また安易な考えからの行動だった。
そして、家に帰ってきた希美に、芽依を紹介した。
『……あ、葵、彼女いたんだ……』
リビングをそそくさと後にした希美は、明らかに泣きそうな顔をしていて。
……でもその涙を拭ってやることはできない。
