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Sinful thread

第4章 追想



次の日、希美が家に帰って来ることはなかった。


昨日の今日だ。
原因はわかってる。

……俺がやったことは、間違っていたんだろうか。


何度掛けても、繋がらない通話。
何度送っても、返ってくることのないメール。


連絡の一切取れない状況に、不安は募るばかり。
希美は今、何処にいて、何をしてるんだろうか。


安眠できないまま朝を迎え、仕事に行って、帰宅する。


───そして、禁忌を犯したあの夜。


『お願い……。あたしを抱いて……』


一日ぶりに帰ってきた希美に言われた言葉。


夢かと思った。
同時に、今にもここで襲ってしまいそうな衝動にさえ駆られる。


絶対にいけないことだとわかっているのに。
それでも、完全に突き放すことはできなかった。

最終的な決断は、全て希美に託して……。


俺はあまりにも、卑怯すぎる。


そんな俺の待つ部屋に、それでも希美は来てくれた。
俺を、選んでくれた。

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