
Sinful thread
第5章 爪跡
泣き顔を隠すように、冷たい水で洗い流すと、リビングへ向かった。
冷えた外気のお陰もあって、ほんの少しだけ、気持ちが引き締まったような気がする。
リビングのテーブルの上には、葵が作ってくれた朝ごはんが置いてあった。
いつも通りだ。
……いつも通り。
あたしの心とは裏腹に、普段となにも変わらない光景がここにある。
……こんなに辛いのは、あたしだけなのかな。
あたしばかりが昨日のことを思い出して、悶々としてるのかな。
そんな状態のまま、朝ごはんに手をつける。
いつもより時間をかけてご飯を食べ終わると、気乗りのしないまま大学へ行く準備をした。
授業なんて、頭に入る気もしないけど。
せめて出席だけでもしなきゃ。
そう思いながら、あたしは家を出た。
