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Sinful thread

第6章 色情



「……こっち向いて。芽依」


ソファに座る芽依の隣に腰を下ろし、顔に手を添えた。


「……やっ、やだっ」


俺の方を向かせようとするその手に、芽依が抗おうとする。


───その瞬間、冷たいものが俺の手に触れた。


「芽依……、泣いてんの?」


俯いていた所為で気がつかなかった。


「……葵…くん……」


芽依の両手が震えていたのは、きっとこの所為だ。

ゆっくりと俺を見上げた芽依の瞳からは、確かに冷たい雫が溢れていた。


「ごめん……っごめんな」


……俺は、なにをしてたんだろう。

なにを見てたんだろう。

……なんで芽依を、泣かしてんだよ……。


「……えっ、葵、くっ」


驚きと戸惑いが混ざったような、そんな声が耳元で聞こえる。


気付いたら俺は、芽依を力強く抱きしめていた。

ほんとはこんなに細くて、こんなに弱い。
今、初めて知った。


今まで……知らなかった。




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