
Sinful thread
第1章 居候
「希美?」
呼びかける葵の声にも、あたしは反応しなかった。
何故かこのまま寝たフリをしていたいと思った。
ちょっとした出来心だった。
「……っ!」
突然、葵の長い指が、あたしの耳をなぞった。
耳たぶを撫で、耳の中まで指が入り込む。
……声が、出そう……
葵、どうして……?
耳から首へ、そろそろと指が移動する。
身体がピクッと痙攣する。
あ……気づかれちゃう……っ。
もっと、触れて欲しいのにっ
あたしの思いが通じたかのように、葵の指が首を這い、鎖骨を優しく、厭らしいタッチで撫であげる。
寝たフリをしながら、幸せだと思った。
葵が、あたしに触れてくれている。
今まで、こんなに近付いたことすらなかった葵が。
お願い、もっとして……葵。
