『さちこ』
第1章 島谷病院
佐々木祥子(ささきさちこ)は、病院のベッドの中で横たわったまま泣いていた。
まばたきもせず、白い天井を見つめたまま、ただただ涙をながしていた。
艶もボリュームも無い、ボサボサの白髪、黒ずんでシミだらけの肌には深い皺が刻まれ、唇は乾燥しきってガサガサに荒れていた…。
布団の中に隠れて見えにくかったが、体もほとんど骨と皮のガリガリである。
誰がどう見ても老婆だ。
控えめに見積もっても、90はかるく越えているように見える年老いた容貌の彼女は、しかし、実際にはまだ60にもなっていなかった。実年齢よりもはるかに老けて見えたが、先日、ようやく55歳になったばかりだった。
「……はぁ……」
彼女は深くため息をついた。まばたきを一つ。目にたまっていた涙が零れ落ちた。
口元を歪めて眉をひそめ、悔しそうな、悲しそうななんとも言えない表情をする。
彼女以外には誰もいない、がらんとした部屋は、まだ昼間だと言うのにどことなく暗かった。
まばたきもせず、白い天井を見つめたまま、ただただ涙をながしていた。
艶もボリュームも無い、ボサボサの白髪、黒ずんでシミだらけの肌には深い皺が刻まれ、唇は乾燥しきってガサガサに荒れていた…。
布団の中に隠れて見えにくかったが、体もほとんど骨と皮のガリガリである。
誰がどう見ても老婆だ。
控えめに見積もっても、90はかるく越えているように見える年老いた容貌の彼女は、しかし、実際にはまだ60にもなっていなかった。実年齢よりもはるかに老けて見えたが、先日、ようやく55歳になったばかりだった。
「……はぁ……」
彼女は深くため息をついた。まばたきを一つ。目にたまっていた涙が零れ落ちた。
口元を歪めて眉をひそめ、悔しそうな、悲しそうななんとも言えない表情をする。
彼女以外には誰もいない、がらんとした部屋は、まだ昼間だと言うのにどことなく暗かった。