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『さちこ』

第1章 島谷病院

「あら…ま。大部屋料金で個室待遇なんてラッキーね?」

祥子一人しかいない病室を見て少し驚いた様子の佐知子だったが、すぐに気を取り直して軽い冗談を言う。
持ってきた花を棚に飾り、ベッド脇の丸椅子に腰かけてニコニコしている。

「…大違いじゃ…」

不意に祥子が口をひらいた。

「…えっ?」

「大違いじゃと言うたんじゃ。アンタもワシも、同じ“ササキサチコ”という名前なのに、アンタは若々しくて元気で毎日楽しそうじゃ。ワシはこんなよぼよぼで寝たきりで…ワシはもうすぐ死ぬんじゃ…」

「そうね」

佐知子はあっさりと同意する

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