テキストサイズ

刑事とBG

第2章 刑事とBG~後編~



それを見て、斉藤は唖然とする。


「これは現実なのか、夢なのか…」

「斉藤さん!!」


その時、背後で祐司の叫ぶ声がした。
振り返ると、後ろから槍が猛スピードで飛んできていた。


「くっ…!!」


斉藤は間一髪かわし、大きなダイニングテーブルを盾にする。


「ハァハァ…マジでむかついてきた…」


テーブルには何本かの槍が突き刺さっていた。


うかつには出れない…
祐司は?と、斉藤はタイミングを見計らってテーブルから顔を出した。


「!」


祐司は団蔵と真っ正面から向き合っていた。


(あのバカっ…まだ説得しようとしてんのかよ!!)


斉藤はいつでも出れる体勢を作った。



……アァァァ……



団蔵の霊は弱っていた。
先ほどの見えない壁へのダメージが大きかったのだろう。


「…団蔵さん、このまま怨みの念が強いと悪霊化してしまいます。成仏できずにこの世をさまようことになります。せっかく80年も生きてきたのに、それを無駄にするんですか?」


祐司は冷静に言い放った。
団蔵からの返事はない。


その時、いてもたってもいられず、聡は団蔵のもとに走り寄った。


「お父さん…!」


…サトシ…


「あんなやり方をして、すみませんでした…
お父さんに手をかけたこと、今では後悔してます。僕がやったことは、法で裁いてもらいます…」


聡は床に膝をつき、頭を下げて土下座した。


「…でも、芳子を汚したことだけは許せません。芳子は僕の支えだった…」

「聡さん…」

「お父さんだって、お母さんのこと、愛していたでしょう? お母さんが死んでから、あなたは変わってしまった…」


……サトシ………


すると、団蔵の表情がみるみるうちに穏やかな顔に変わっていった。


《そうだ…ワシはいつの間にか忘れていた…節子のことを…》



愛する者を失って、
どう生きていけばわからなくなった…


ぽっかり空いた穴を埋めてくれるなら、誰でも良かった…



《ただ…芳子さんは、どことなく節子に似てたんじゃ…》


団蔵は芳子のもとに近寄った。


《今まですまなかった…》

「お義父さん…」


芳子の目から、涙がこぼれ落ちた。


ストーリーメニュー

TOPTOPへ