
しなやかな美獣たち
第2章 ♠:What is Love?【純愛ホラー・BL】
「なぁ?出てきて死に方を教えてくれよ…。何処に行ってんだよっ!」
そうだ。頸動脈を切れば良いのか。
俺はふと思いつき、包丁を首筋に当てた。そして掻き切ろうとした瞬間だった。
「馬鹿な事しないでっ!!!」
アイツの声が聞こえて、持っていた包丁が弾き飛んだ。
後ろを振り返ると、凄い形相で俺を睨むアイツが居た。
「こんな事、望んでないって言ってるじゃない!」
「だけど、俺はお前と一緒に居たい…」
「ゴメン…それは出来ない…」
「どうして?」
「僕…成仏出来そうだから…。キミに愛して貰えて…。僕は満足しちゃったみたいなんだ…」
「そんなっ!!」
「僕の心残りは…誰かに愛されたかったからだったみたい…死ぬほど…本気で…愛されたかった…」
「待てよ!行くなよ!!」
「ゴメン…キミを振り回して…こんなに愛してくれているのに…傍に居られないなんて…」
そう言うヤツの身体はどんどん透けて来て。
「キミがお爺さんになって、天国に来てくれるまで、向こうで待ってるよ…。だから…ちゃんと生きて?僕からのお願いだよ…」
消えそうなヤツの身体に手を伸ばす。勿論、俺はヤツに触れる事すら出来ない。
「有難う。僕を愛してくれて…。僕もキミを愛してるよ…純也」
そう言うとヤツは俺を抱き締めた。
「俺も…お前を愛してるよ…旬」
振れる事は出来ないが、俺も彼を抱き締め返す。
