甘酸っぱい果実のその果てに
第1章 プロローグ
洗濯機がぐるぐる回る。私の心もぐるぐる回る。今日は土曜日。会社が休みの日。それなのに早く目が覚めてしまった。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
隣人はいつも彼が仕事に行く時と彼が仕事から帰って来る時に口付けを交わす。ぱったり出るときが同じで目が合うと恥かしそうに微笑む。奥さん……と言っても私と同じ二十代半ばだろうか? のお腹は大きくて、妊娠している。
東京の大学を卒業して、二年。東京に残るのも地元の北海道に帰るのも嫌で、大阪で就職した。大阪でもゴミゴミした都会的なところは嫌で、失礼ながらすこし田舎なここ、和泉中央に決めた。
北海道の彼、俊哉(トシヤ)と別れて、もう七年。あの頃、俊哉に二股をかけられて、一方的に私は俊哉の前から消えた。それぐらいに俊哉の浮気が許せなかった。
それでも未だにスマートフォンの中には俊哉の電話番号が入ったままだ。あの頃は、ガラケーで今はスマートフォン。それが時の流れを感じさせる。
だけど――。
私はもっと許せないことをしている。
「行ってらっしゃい」
「行ってきます」
隣人はいつも彼が仕事に行く時と彼が仕事から帰って来る時に口付けを交わす。ぱったり出るときが同じで目が合うと恥かしそうに微笑む。奥さん……と言っても私と同じ二十代半ばだろうか? のお腹は大きくて、妊娠している。
東京の大学を卒業して、二年。東京に残るのも地元の北海道に帰るのも嫌で、大阪で就職した。大阪でもゴミゴミした都会的なところは嫌で、失礼ながらすこし田舎なここ、和泉中央に決めた。
北海道の彼、俊哉(トシヤ)と別れて、もう七年。あの頃、俊哉に二股をかけられて、一方的に私は俊哉の前から消えた。それぐらいに俊哉の浮気が許せなかった。
それでも未だにスマートフォンの中には俊哉の電話番号が入ったままだ。あの頃は、ガラケーで今はスマートフォン。それが時の流れを感じさせる。
だけど――。
私はもっと許せないことをしている。