テキストサイズ

甘酸っぱい果実のその果てに

第6章 再会

「しゃーない。もう許したる」

「そっか。大学卒業して、大阪に行って、三年目か……」

「うん。私、俊哉のあの時の気持ち分かったで」

「……違うよ。俺、優衣のこと好きだったのに、寂しさに負けて、友達に誘われて行った合コンで知り合った女の子で心の穴を埋めてしまった。優衣がいなくなった日。ほんまに後悔した。けど、悪いのは俺やから、追いかけられなかった。そしたら、携帯も繋がらなくなるし、大学の研究が忙しくてバイトもしてない俺が会いに行くこともできないし。何より、行けなかった。俺が悪いから。女の子とはすぐに別れて、泣かして……。ずっとずっと優衣だけを考えて生きてきた。卒業して働いてからは、お金だけが貯まっていく日々。何の為に働くのかも、生きているのかも分からないくらいに淡々とした日々」

「そう……」

「やり直して欲しい。もう一度」

「ごめん」

 ここで、俊哉に流されるわけにはいかない。今だけの気持ちで揺らいではいけない。時間が経ち過ぎた。もうやり直すなんて出来ない。私の心の中には、優祐さん……優祐さん……優祐さん。

「分かった」

 私の言葉に俊哉は一言、暖かい部屋の中に戻っていく。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ