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甘酸っぱい果実のその果てに

第7章 再出発

「行くな! もう離したくない」

 後ろから細くて頼りない体に抱きしめられた。懐かしい声。俊哉の声。

「どうして?」

「優衣、俺は大阪で言うどうしようもないあかんたれで、ダメな奴。泣かせてばっかりで最低なのも分かってる。それでも、俺には優衣しかいない。これ、俺の携帯。電話帳に女の子は優衣と会社の事務連絡用の人しかいない。メールもこんなんやし、ロックもかけてない。さっき変な大阪男から俺に電話あった」

「え?」

 優祐さんだ。どうして……? 抱きしめる俊哉の手に雫がぽたぽたと落ちる。私の涙だ。

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