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旅は続くよ

第19章 ごめんね

M「…まー兄、知らないだろ。俺、嬉しかったんだよ?」

そう、俺は嬉しかったんだ

育ててもらった恩も忘れて

可南子ママとまー兄の愛情を踏みにじって


A「…潤?」

M「嬉しかったんだ…。
まー兄と兄弟じゃないと判って、
血が繋がってないと判って…喜んだんだ」

これ以上言っちゃいけない

頭の何処かで止めようとする自分が確かにいるのに

止まらない

止められないんだ

心にずっと作っておいた堰が破れてしまったみたいに


M「…ごめんね……」

俺は何を謝ってるんだ

何を言おうとしてるんだ

ダメだ

そう思っても

涙は勝手に溢れてきて

気持ちも勝手に零れてくる


A「……潤が謝ることじゃ」

M「違うんだ。…ごめん、違う…」


ダメだ

止まらない

苦しくて、止まらない



M「…好き…、なんだ……」

A「…え?」


まー兄の目が見開いてる

M「ごめんね…」

驚かせるつもりはなかったのに

困らせるつもりもなかったのに

止められないんだ



M「ずっと……、ずーっと、
まー兄が好きだったんだ…っ」


ああ…、ほら

まー兄が泣きそうになってる

言っちゃいけない言葉にまー兄の瞳が潤んでる



M「…愛してるんだ、まー兄…」


固まったまま瞳から、綺麗な滴が滑り落ちて

まー兄は手で顔を覆って全身を震わせた

その涙が、…俺たち兄弟の終わりを告げているように見えた


…終わってしまった

違う、自分で終わらせてしまったんだ

居心地のよい弟の座を降りて

たった1本の絆を自分で切ってしまった…


M「…ごめんね、こんな弟で…」

顔を覆ったまま、まー兄が首を横に振る

M「…ごめん、もう…弟じゃなかったね…」

A「……ィック……、ぅぅ…」


忍び泣く小さな声が、静かな部屋に響いた

切なくて

悲しい声

…泣かせてるのは、俺……


もう、耐えられない


M「…ごめん。今日から暫く大学に泊り込むから」

買い物してきた食材をそのままに

俺はその場から逃げ出した




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