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旅は続くよ

第20章 心配だけど

マスコミの端くれとは思えない拙い言葉で思いを口に出すと

S「“許す”って、誰から?」

N「…えっ」

S「誰から許されたいの?
許してもらわなきゃ出来ない仕事じゃないのに」


…誰から?

母さんから?

自分から?

分からないけど…

こんな自分は許されないと漠然と思ってた


S「…誰もニノを縛ってないよ、きっとお母さんも。
ニノは自由なんだ」

何が何だか分からなくなってきた

ただ、翔ちゃんの言葉だけが優しく響く


S「きっとさ、ニノは自分の仕事に誇りを持ってるからじゃないか?
それだけ好きなんだよ、この仕事が」

N「…え、どういう事…?」

S「だからさ。真摯に向き合ってるからそう思うんだよ」

N「…そんな大層なもんじゃないよ」

S「そんな事ない。
一緒に取材に行った時、すごくイキイキして見えたよ。…凄く綺麗だった」


翔ちゃんがあんまり優しく言うから

あんまり胸に浸み込むように言うから

堪えてきた何かが目から溢れてきて

止まらなくて

N「…ふっ…ク……」


バカみたいだ

ガキじゃあるまいし

ポロポロ涙流しちゃって

恥ずかしいったらありゃしない


でも

目の前の翔ちゃんの笑顔が優しいんだ

温かいの

『いいんだよ』って

何が良いんだか分かんないけど

『いいんだよ』って

こんなくだらない俺でも

ウザい俺でも

『いいんだよ』って


それだけで俺はまた涙が止まらなくて

誰がどう言おうと翔ちゃんが許してくれるんだって

泣いてもいいんだって…


N「…えっ…く、…しょぉ、ちゃ…」

自然に抱きついてた

縋りつくように

甘えるように


胸元を濡らす俺の背中を

翔ちゃんは、ずっとポンポンとゆっくり叩いてくれていた



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