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旅は続くよ

第23章 あなたに1番に

Sside



風呂から上がったら、リビングから賑やかな笑い声が聞こえてきて

あ、ニノが帰ってきたんだ…

そう思っただけで心が弾んだ


S「よう、おかえり」

N「ただいま」

S「遅かったね」

O「雅紀んとこ寄ってきたんだって」

うん、と頷く笑顔がチクンと胸を刺す


雅紀と潤がそれぞれ家に帰ってこなくなって

俺だって少し心配だけど

まあ、今までも泊まり込みとかあったし

アイツらだって大人なんだから、と

格別気にしないようにしてたけど…

そっか…

わざわざ会いに行ってんだな


S「…まだ忙しそう?」

N「みたいよ?今日も泊まり込みだってさ」

S「ふ~ん…」


何しに行ったの?とか

そんなに雅紀に会いたかったの?とか

フラれたくせに未練がましい言葉が口をついて出そうになる

…未練がましいっつーかさ

まだ諦めきれてないんだよな、俺は…

気の無い返事をしたら智くんの探るような視線を感じて

慌てて話題を変えた


S「そういやさ、智くん風呂早く入んなくていいの?」

O「ん~、ねみぃ…」

S「明日朝早いって言ってなかった?」

O「え~?なんかあったけ……
あぁーっ!」

ダラリとテーブルに突っ伏してたくせに

急にガバッと起き上がって

O「明日!師匠と約束してた!じゃ、俺風呂入って寝る!おやすみー!」

あっと言う間にリビングから消えてくのを、俺もニノも呆然と見送った



N「…師匠って誰よ?」

S「3丁目の釣りの師匠…?だと思う」

N「あ~、どうせジジイなんでしょ」

S「まあ、若いとは言えないね。
年金受給者ではある、な…」

N「あの人の交友関係って謎だわ~。
この前は女子高生だったし…」

S「え、女子高生?」

N「うん。なんか店先でLINE交換してたし」

S「LINE?」

N「そう。こう、フルフルと」

S「……」

N「……」


智くんが古書店の店先で女子高生と携帯を振り合ってる姿想像して

S「んははっ」

N「プハッ」

ついついニノと笑い合ってしまった


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