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旅は続くよ

第25章 待ってて

Aside



潤を公園で見失った後、

泊り込んでる店の休憩室に戻ったら、ちょうど携帯が鳴った

潤!?

ディスプレイの文字も確認せずに出ると

N「あら、早いこと」

ニノの暢気な声が聞こえてきた


A「…なんだ、ニノか…」

N「何だとは失礼だなアンタ」

クスクス笑う声に反応する気も起きない

頭の中は、どうしよう…って

潤が走って行っちゃった

どうしよう、って

それしか浮かんでこない


N「…何かあった?」

A「………」

N「何かあったんだろ。言いなさいよ」

A「………」

N「考えてないで言えや。
考えんの向いてねーんだよ、直感の男なんだから」


…失礼な男だな

そう思いながらも、ニノの言う通り何も考えられなくて

結局洗いざらい白状してしまった



N「…なんで追いかけなかったの?」

A「追いかけたよ!追いかけたけど…」

捕まえて何を言ったらいいのか分からなくて

立ち止まってしまったんだ

そもそも、潤の腕を掴んだ時だって

何を言ったらいいか、分かんないままだったんだ

ただ掴んだだけ

このままじゃいけない気がして

潤を捕まえなきゃ、って

ただ、それだけ…


N「正解じゃねーの?それ」

A「え…?」

N「言ったでしょ?アンタは直感男なんだって。
『捕まえなきゃ』って思ったら、それが正解なんだよ」

A「でも…、捕まえて何言えばいい?
どうしたらいいか何も分かってないから困ってんのに…」

N「『好き』って言やぁイイじゃん」

A「………」

N「好きなんでしょ?」


それは…

好きに決まってる

あれから何度も考えて

それはもう…、ちゃんと分かったんだ

でも


A「…そんな単純な話じゃねーし…」

N「はあ?」

A「そんな単純な色恋の話じゃねーんだよ…っ」


『好き』って答えて、それから?

恋が終わったら、それから?

考えれば考えるほど、分かんない事だらけだよ


『好き』って答えたら、俺は何?

もう兄貴じゃねーの?

まだ兄貴でいられんの?

兄貴だったら弟の未来を考えなきゃなんじゃねーの?

真っ当な幸せを奪っていいの?

『好き』なら何でもいいの?

今が良けりゃ、それでいいの?

俺は嫌だ


それじゃ…、俺が嫌なんだよ…

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