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旅は続くよ

第26章 坂道にて

Aside



いよいよ家に帰る日の夕方

ちゃんと1人で帰れるって言っておいたのに

ニノが店まで迎えに来てくれた

さと兄の怖い説教を逃れる為なんだって


A「さと兄の怒鳴り声なんて聞いた事ないけど…」

N「アンタ、そりゃ今までラッキーだったんだよ」

A「そんな怖いの?」

N「いや、なんつーかね…。心臓に悪いって言えばわかる?
あの穏やかジイさんから阿修羅への激変ぶり、マジでビビるんだって」


2人並んで歩く帰り道

へえ~と相槌を打ってみたものの、全く想像がつかないよ

翔ちゃんは昔からキレるとおっかなかったからね、わかるんだけど

さと兄がね~…

いくら想像しても思い浮かばない俺に

N「あ~、アンタの頭じゃ無駄だから。
それよりさ、潤くん今夜は遅くなるけどちゃんと帰ってくるって」

急に潤の名前が出てきた途端

俺の心臓が体の中でピョコンと跳ねて

A「…そう」

一息ついてから返事をしたはずなのに

ドキドキが止まらなかった


A「どんな様子だった?」

N「潤くん?」

A「うん」

N「ビックリしてたよ、アンタが帰ってくるっつったら」

A「…ビックリしてただけ?」

N「そりゃ~ね、なんか張り詰めた顔してたよ。
覚悟決めたみたいな…そんな感じ」

A「ニノ、なんか言った?」

N「いや?俺の口から言える事なんて何1つ無いでしょ」

A「…そっか」

N「相葉さんから伝えなきゃ、ね?」

A「うん。…そうだね」



2人でゆっくり歩く道

日が長くなり、ずっと射していた西陽は街の向こうで細い線だけを残していた

もうちょっと行くと公園へ続く坂道

それを上りきったら、あの家に着く


ほんのちょっと離れてただけだったのに、何だか懐かしい感じがした

さと兄、翔ちゃん、ニノの笑い声に囲まれて

潤の笑顔がすぐそこにあって…

母ちゃんが逝ってしまった哀しみは此処でしか癒せないんだと

それは泣きたくなるくらい幸せなんだと

走って行きたい気分になった


N「ねえ、俺が先に聞いてもいい?」

A「…なに?」

N「潤くんに会ったら…、何て言うの?」


潤に会ったら…

一晩中考えたよ

どんな言葉が1番いいのか、考えれば考えるほど分かんなくなって

そしたら1つしか浮かばなくなって

だから、こう言うしかないんだ






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