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旅は続くよ

第28章 信じて

Mside



なるべく早く帰りたかったのに

就職の事で教授に捕まったりして

結局、家に着いたのは9時を過ぎていた


でも

早く帰って来たかったくせに、いざ玄関の前に立つと

家に入るのにも少し勇気が必要で…

あんなにいろいろ覚悟を決めた筈なのに

リビングで1人待っててくれたまー兄の姿を見ると

そんな覚悟じゃ全然足りてない気がした



A「…おかえり」

まー兄の声が少し緊張してる

M「…た、だいま…」

でもそれ以上に俺の声が緊張してて

…これじゃダメだ

どんな結末も受け入れられるように、感情を捨てなきゃ

そう心を奮い立たせた


M「まー兄も…おかえり」

A「え?」

M「帰って来てくれたんでしょ?」

A「…うん、帰って来た」

今日帰ってくると聞いてたんだけど

実際まー兄の顔を見て

まー兄の声で『帰って来た』と聞けて

やっと…ホッと出来た

なのに


A「潤。話があるんだけど…」

分かってた事を言われた途端、全身がギクンをしてしまう

やっぱり覚悟が全然足りてない

覚悟なんて…きっと出来ないんだな


M「…いいよ。ここで?」

A「ここじゃちょっと…。潤の部屋行っていい?」

M「俺んとこ?」

『いいよ』と言おうとして思い留まった

そう言えば、いつでも出て行けるように荷物の整理始めたんだっけ

見られちゃマズイ物なんて無いけど…


M「俺の部屋はちょっと…」

A「なんで?散らかっててもいいよ」

M「いや、俺が良くないから」

A「俺はいい。行くよ」

M「あっ、ちょ、まー兄…!」


まー兄が離れに続く廊下をズンズン歩いてって

何とか止めようと後を追ったけど

M「まー兄!マジ、待って」

鍵なんて気の利いた物が付いてない扉は簡単に開けられて

まー兄は無言で俺の部屋に入っていった


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