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旅は続くよ

第32章 頼むよ

N「あ~、おっかし…。さと兄は単純でいいね」

O「んだよ。悪かったな」

N「褒めてんのよ。アンタ、古本屋の親父なんか止めて人生相談の店でも開いたら?」

O「なんだ、それ」

N「だからさ…、シンプルでグッときた。・・・ありがと」

O「…おう」

礼を言って見せたニノの柔らかな笑顔に

『…もう潮時なんじゃね?
アイツも明るい所に出られた事だし。いい顔してたでしょ』

不意に弟が零した寂しそうな言葉を思い出した


翔ちゃん

ニノのこの笑顔は翔ちゃんに向けられたものだよ?

潮時なんて言うな

諦めるなんて言うなよ

ちゃんと頑張った翔ちゃんの想いは

こうやってニノにちゃんと届いてるじゃねぇか


O「頼むよ?」

N「え、俺?…急に何よ、頼むって」

O「いーから。イロイロだよ」

N「だからイロイロって何だよ」

O「イロイロはイロイロだよ」

N「んふふっ、何それ。さと兄、時々ワケわかんない」


ワケ分かんなくていいよ

俺の口から何か言うと翔ちゃんに怒られるだろうから何も言えねえけどさ

恩返しでも何でもいいから、優しくしてやってくれよ


ニノじゃなきゃ、きっとダメなんだ

俺がどんなに励ましても、翔ちゃんにはきっと足りない

ニノしか届かないものがあるんだ


兄バカ丸出しの願いを心の中で繰り返して

クスクス笑うニノを眺めた



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