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旅は続くよ

第34章 罪作り

Mside



M「とにかく…、今は着て」

A「なんで」

何度もこのやり取りを繰り返しても、まー兄は中々スウェットを着てくれなくて

M「だから…とにかく今日はダメ。準備もできてないし」

A「準備?」

M「あのね…。男同士にはいろいろ準備が必要なのっ」

最後はちょっとキレて見せて、やっと納得したように上着を着てくれた


それでもクスクス笑って

A「今日はここで寝てこうかな~」

なんて呑気な事を言ってるから、明日学校に早く行かなきゃとか嘘ついて

やっとお引取り願う事が出来た


まー兄がいなくなった部屋で1人、ベッドに寝転がると

M「はああぁ…っ」

自分でも驚くくらい、大きな溜め息が出た


ホントは…準備なんか出来てる

まー兄と想いが通じてすぐ、通販でいろいろ買ってあるんだ

我ながら気が早いと思った程、あの時は舞い上がっていろいろ買い揃えた

準備出来てないのは…、俺の心の方だ


『今日はここで寝ていこうかな~』なんて…

あんな綺麗で、可愛くて、無邪気な笑顔で

ったく、人の気も知らないで…


あんまり思い切りよく、いろいろ飛び越えないで欲しいよ

こっちは未だ夢の中にいるみたいなんだよ

まだ…怖いんだ


まー兄の言葉を疑ってるわけじゃない

きっと今は本気で俺を好きでいてくれてるんだと思う

そう…、『今』は

でも、いざとなった時、拒まれたら?

やっぱり嫌だと思われたら?

勝手にそんな恐怖がまだ心の中に巣食ってるんだ

ずっと叶わない想いだと思ってた分、結構根っこが深いんだと自覚してる

それをあんな無邪気な笑顔で『大丈夫』だなんて…

軽々しく言わないでよ

悩んでる俺がバカみたいじゃないか

自分が罪作りな事してるって、分かってないだろ!


…なんてさ

ホントは嬉しくて堪らないんだよね

なのに足踏みしてしまうなんて…こんな男らしくない自分が嫌だ

歯がゆくて仕方無い

そう思うと、また大きな溜め息が出た


モヤモヤした頭に、さっきのまー兄の姿が浮かぶ

スウェットを脱いで露わになった肌…

とても綺麗だった

勿論初めて見たわけじゃないけど、ああいう気分の時に見たのは初めてで…

思わず体の芯がドクンと脈打った

くそ…

あんなの反則だよ

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