テキストサイズ

旅は続くよ

第38章 今さら

Nside



さと兄には「任せて」なんて胸を張って見せたけど

考えてみたら、翔ちゃんとは何日かまともに顔を合わせてなかった

『出て行け』と言われて以来、ずっとだなんだよね


最近、珍しく翔ちゃんが残業続きで夕飯も一緒じゃないし、

朝は俺がわざと寝坊し続けてる


まあ…ザックリ言うと、きっと避けられてんだよね

残業が続いてるなんて、何となく嘘っぽいし

朝だって、いつもなら鬼のように起こしに来るのにさ

…前は布団剥がされたっけ

引っ張り合いっことかしてさ

そんなに昔の事じゃないはずなのに、思い出すと何だか寂しさが込み上げた


いやいやいや…

おセンチになってる場合じゃないんだって!

要は、この状況でどうやって話を切り出すかって事ですよ

ウザがられるのは覚悟で挑むにしろ

成功確率が高そうな作戦を遂行しなきゃいけないでしょ

失敗して警戒されたら元も子もないじゃん


リビングで待ち伏せしようか

偶然を装って世間話から入っちゃったりして?

でも、部屋に逃げ込まれたら…それでお終いだよね

じゃあ部屋に押しかけようか

他の用事とか作って、部屋に潜り込んでみる?

でもなぁ、他の用事なんて思いつかないもんなぁ…


いろいろ考えた末に、まずは正攻法で行く事に決めた

翔ちゃん相手じゃ、いろいろ試みても結局見透かされちゃうかもしれない

ならば真正面から挑んだ方が、翔ちゃんの胸に響くかもしれないと思った


N「あのね、翔ちゃん」

今日も遅く帰ってきた翔ちゃんを待ち伏せして

俺の姿を見るなり自室に行こうと踵を返した腕を掴んで話しかけた


N「お姉さんからの電話の事だけど」

パッと振り向いた瞳は、大きく見開かれてる

…険しい表情

いきなり挫けそうになってしまった


S「…何の事?」

冷静を装った低い声

踏み込んでくれるな、と言われてるみたいだけど

N「お父さんの事…聞いちゃった」

…負けてらんないんだよ

翔ちゃんにも、自分にも…

気持ちを奮い立たせて言葉を続けた


N「どうするの?会いに行くつもり?」

わざと大きな声で話し出すと

S「ちょっ、お前、こんな所で…」

翔ちゃんは慌てたように辺りを見回して

S「…ちょっと来て」

今度は逆に俺の腕を掴んで、自分の部屋へ入って行った

ストーリーメニュー

TOPTOPへ