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旅は続くよ

第38章 今さら

久しぶりに入った翔ちゃんの部屋は、1度だけ一緒に寝た時と何も変わってない

変わってしまったのは…、俺らの関係だよね

そう思うと、懐かしさと切なさで胸がチクンと音を立てた


S「なんで知ってんだよ、その話」

N「…たまたま電話を取っちゃって」

S「ニノが?」

N「…うん」

S「智くんは?」

N「…え?」

S「智くんにはこの事話した?」

N「…ううん。話してないよ」


さと兄から聞いたことは黙っておこうと決めていた

それをバラしちゃったら、さと兄が沈黙を守ってる意味がないし

きっと翔ちゃんも知られたくないはずだもん

ちょっとだけホッとしたような表情をした翔ちゃんを見て、尚更そう思った

N「安心して。翔ちゃんがいいって言うまで誰にも話さない」

S「…悪い。そうしてくれるか…?」


立ちすくむ翔ちゃんを横目にベッドの上に座り込んだ

それは、すぐに部屋を出てなんか行かないよという意思表示

ちゃんと話してくれるまで出ていかないんだから

そんな気持ちを込めて、座った場所のシーツをギュッと握った


N「お姉さんにいろいろ聞いた。…どうすんの?」

S「どうすんのって…、別に?どうもしねーよ」

N「会いに行かないの?」

S「…行かない」

N「会いたくないの?」

S「……会いたくねーよ」

N「後悔…、しない?」

S「…んだよ。俺にどうしろっての…」

頭をガシガシと掻いて、大きなため息をついた


S「…別にどうだっていいだろ?この話はお終い」

N「何でよ。お終いにしない」

S「…お前、何言って」

N「やだ。絶対やだ」

S「何だよ、これは俺の問題だ」

N「そうだけど、でも」

S「ニノには関係ないだろ」

N「…やだ!」


やめてよ

『関係ない』なんて言わないで

俺を翔ちゃんから切り捨てないでよ

関わってたいんだよ


…前にもあった、こんな事

あの時は立場が逆で、俺が翔ちゃんに『関係ない』って言ったっけ

『関係ある』

翔ちゃんはそう言った

『お前が好きだから』って


そっか…

こんな気持ちだったんだね…


N「俺……」


同じだよ

…翔ちゃんが、好き……

だから、関わっていたいんだ


でも

言えない


今さら、そんな事言えないや…


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