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旅は続くよ

第38章 今さら

S「…別に、俺は怒ってなんか…」

N「それは自分の気持ちを1番に考えてないからだよ
愛してくれた人の事考えて、死に掛けのジジイに遠慮して、翔ちゃんは自分の気持ちを後回しにしてんじゃない?
普通はね、『生まれてくる俺を無視して、よくも逃げたなクソジジイ!』って怒るもんですよ」

S「……そう、かな…」

N「そうよ。当然でしょ」

S「でも…怒れったって、何言ったらいいかわかんねーよ」

N「じゃあ、俺が見本を見せてあげる」

S「…え?」

N「俺も大嫌いな父親に会うよ。会って、文句言ってやる」


咄嗟に思いついた事

自分で言った言葉で気づいたんだ

『普通はね、『生まれてくる俺を無視して、よくも逃げたなクソジジイ!』って怒るもんですよ』

…よくも自分の事を棚に上げて言えたよ、俺

俺も父親に言えてない

無視して、逃げて、ちゃんと向き合ってないんだ


N「俺も…今までロクに口も聞いた事ないけど…、翔ちゃんに見せてあげる」

S「いいよ、そんな。…何もニノがそこまでする事は」

N「いいの、やらせて?」

トラウマみたいな存在の父親に会いたいわけじゃないけど

きっといつかは乗り越えなきゃいけない壁だと感じていた

だったら、翔ちゃんの目の前で越えて見せたい

それがきっと、翔ちゃんが俺に今までしてくれた事へのお返し

翔ちゃんがこれから越えるための勇気にして欲しいから


父にあったら

この件が片付いたら

この家を出よう

翔ちゃんが望むように、たった1人でも自分の足で立てる男になろう


大好きだよ、翔ちゃん

今さら好きになって、なんて言わないから

笑顔を見せてよ

背中を押した甲斐があったと

少しはマシな良い男になったなと

そう感じたら、笑ってくれる?


大好きなんだよ…


もう口にする事は出来ないけれど

こんな気持ちは初めてなんだ





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