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旅は続くよ

第3章 一緒に朝ごはん  翔編

S「何?」

N「コーヒー飲みたいなと思って」

S「俺も。じゃあ2人分な」

コーヒーメーカーに2人分セットして

あ、と気づく

S「そうだ。俺淹れるの濃い目だからさ、ちょっと薄めてな?」

N「あ~、いいよ。大丈夫。俺も濃い目が好きなの」


そっか

好みが同じなんだな…

なんて何故か嬉しくなりながら

2人分のコーヒーの香りが鼻を擽って

キッチンに立ったまま一緒に飲んで

琥珀色の液体が体に染み渡って目覚めさせていく



S「よし、行くか」

スーツのジャケットに腕を通してコートを羽織る

N「お~、サラリーマン」

S「そうですけど?」

N「んふふっ、家にサラリーマンがいるって何か新鮮・・・」

そんな事を言って薄く笑うニノを見て

俺は初めて会った日の言葉を思い出した


― 『母親はこの世にいません。

父親はいるっちゃーいるけど…

他所にご家庭を持ってるんで』 ―


目の前の屈託のない笑顔からは想像できない家庭事情だ

詳しい事は知らないけど、

ふと垣間見える…ニノの“もう1つの顔”



知りたい

そう言ったら怒るだろうか

まだ知り合ったばかりの俺になんか話すことは無い、と

それでも知りたい、と言ったら?

人懐っこく見える笑顔の裏側を見たいんだ

理由なんてわからない

興味本位で他人の事に首を突っ込む趣味は無いつもりだし

軽々しく人には言えない事情かも知れない事も承知してる


でも

知りたいんだ

・・・・・・今はそんな胸の内をお首にも出さないけど



出掛けようとリビングを通ったら潤が声を掛けてきた

M「今日、遅くなる?」

S「いや、普通。なんで?」

M「今晩、鍋にしようかなって」

S「お~、いいね。じゃ、いってきます」

O「いってらっしゃ~い」

M「気をつけて」

N「お仕事頑張ってね~」


皆の声を背中に受けて

・・・殊更ニノの声が何故か大きく聞こえて

さあ、今日も頑張るぞ!

なんて何か妙なテンションで

俺は外へ1歩踏み出した


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