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旅は続くよ

第40章 もう少しだけ

S「ニノ?何かあったなら話聞くよ?」

N「ううん、何もないよ。でも…」

翔ちゃんがさっき触れた首筋に手を当てる

N「やっぱ、熱でもあんのかな…」

S「どれ」


また首を両手で挟まれて、2人の距離が近くなる

半袖シャツから伸びる太い腕…、好きだな

1番上のボタンだけ開けた首元にも、なんかキュンとくる

ふと目線を上げると、心配そうな大きな瞳

…綺麗だなぁ

キュッと上がった眉も通った鼻筋も男らしいのに

優しそうで綺麗で大きな瞳が、なんか可愛いの

そういうとこ、大好き…

吸い込まれるようにボーっと見ていると、翔ちゃんが困ったように笑った


S「ははっ、なんだよ…。どうした?メッチャ見るな」

N「…ねえ。なんで体温、首で測るの?」

S「ここにリンパ通ってるだろ?熱でる前はここが熱くなるんだって」

N「ふ~ん…」

S「お前、やっぱ熱あるんじゃね?なんか目も潤んでるし」

N「…そうかな」

S「メシ食ったらさ、今日は薬飲んで早く寝な」

N「やだ」

S「はあ?やだぁ?」

N「すぐになんか、寝たくない」


もうすぐ

あと少しでこの家から消えていなくなるからさ

少しだけ…我が侭言わせてよ


S「寝たくない、って…。熱があんだからさ」

N「何か…そう、今日は映画とか見たい気分なんだよね。録画したヤツでいいから」

S「…見ながらなら、大人しく寝てる?」

N「分かんない」

S「おいっ」

N「じゃあ…見張ってなよ」

S「…え?」

N「翔ちゃんが見張ってれば?俺が大人しくしてるかどうか」


なんか、声が震えそう…

俺、必死じゃん

あと僅かな時間、少しでも翔ちゃんの傍にいたくてさ

素直に『一緒にいたい』なんて言えないけど


柔らかそうな唇に指を当てて、翔ちゃんが少しだけ思案顔をして

それから覗き込むように俺を見た

S「SFとミステリー、どっち?」

N「…え?」

S「俺が見たくて録画しといたのあるから。ニノはどっちが好み?」

N「ミステリー」

S「あ、待った。やっぱミステリーだめ。気になって眠れなくなっちゃうじゃん」

N「やだっ、ミステリー見たい」

S「はははっ、子供かよ」


…バカ

そんな笑顔、しないでよ・・・


俺はサッサと母屋に歩き出して、泣きそうなのを誤魔化した


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