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旅は続くよ

第43章 そうとは知らずに

Sside



夜遅くに突然俺の部屋に来て、クッションを抱きしめ小さな声で不安そうに話す姿に

心配、というよりも

守ってやりたい、そんな気持ちが湧いてきて

S「…寝れるか?今夜」

そんな言葉が思わず口から飛び出していた


N「…え?」

S「ほら、誰かさんはすぐ不眠症になっちゃうから」

…いや、違うな

ホントは俺が一緒に眠りたいだけ

それを心が不安定だった頃のニノのせいにして

今はもうそんな心配いらないんだろうに親切面して引き留める


何言ってんの、と笑い飛ばされると思っていたら

N「眠れそうにないって言ったら…、一緒に寝てくれる?」

一層か細い声が聞こえた

そんな夢みたいな答えにちょっと驚いて

S「…いいよ」

夢でもいい、と微笑んだ



ベッドサイドの薄灯りの中、仰向けに寝転んだ

右半身に高めの体温を感じる

以前一緒に寝た時は、どんな姿勢を取って寝たらいいのかわからずに

焦って変なこと口走ってたなぁ…

ドキドキは今も変わらない

ただ2度目だから慣れた風を装うだけ


N「久しぶり、このベッド…。前来た時は確かまだ冬だったよね?」

S「あ~、そうかも…。確かリビングにコタツ出てたんじゃね?」

N「うわっ、そっかぁ。今じゃ見たくもないね、コタツなんて」

S「んははっ、可哀想に。あんなに重宝がられてたのにな」

N「そりゃさと兄にでしょ。あの人、カメみたいになってたもんね」

久しぶりにニノの弾んだ笑い声を間近で耳にした気がする

それがやっぱり嬉しくて

楽しくて

…ああ、俺、コイツの事好きなんだな

改めてそんな事を思った


バカ話していると隣で小さな欠伸が聞こえてきて

S「…もう寝よっか」

いつまでもこうしていたくなる気持ちに自ら線を引いた

N「…まだ眠くない」

拗ねたような声で子供みたいな事言って

…くそっ、どんだけ可愛いんだよ

何べん俺はキミに恋してる事に気づかされるんだろう


S「嘘つけ。欠伸してたくせに」

N「…ホントだもん」

だったらこのまま抱きしめてやろうか

どうせ眠れないなら朝まで…

って、何を考えてるんだ、俺は!

出来もしないくせに…


S「眠くなくても目を瞑ってな。明日は大事な日だろ?」

まるで自分を宥めるように言い聞かせて、自分も無理やり目を瞑った


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