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旅は続くよ

第8章 一緒に寝ようよ 翔編

S「俺で良けりゃ…、いつでも聞くよ」

思わず覗いてしまったニノの気持ちの中は

思った以上に重い枷が存在していたけど

少しでも軽くなるのなら、俺を利用すればいい

どんなに重くドロドロした事でも

喜んで聞いてあげるから

決して背を向けたりしないから


N「ん…。ありがと」

安心したように笑う

その笑顔をいつでも見たいんだ


S「さーて。眠る前に何か違う話でもすっか」

気分を変えてもらう為に、わざと明るい声を出した

N「んふふっ、そうだね~
…じゃ、なんか面白い話してよ。仕事の失敗談とか」

S「ねーよ。ってかなんで俺の失敗が面白い話になんの?」

N「あら、知らないの?他人の失敗談こそ蜜の味じゃない」

S「あー…、こう言っちゃ何ですけど俺、デキる男なんで。ご期待に添えかねますけどね?」

N「うっわ、感じワル」

S「まあ、代わりにウチの智くんの話ならご期待に添えるかと」

N「あははっ。あ~、それはかなり期待できますね」

S「どっから行く?1位から行くか、3位ぐらいから攻めるか」

N「はははっ!それ何の順位なんだよ」


智くんをダシにして

オーバーな位バカな話をして

ニノが「腹痛い」って言うまで笑わせて

明日があるから、と電気を消しても

…眠れなかった



暫くすると隣から寝息が聞こえてきた

スー…、スー…

その穏やかなリズムにホッとする

良かった…

眠れたんだな…


ふと隣を見ると、僅かに壁際を向いてるから寝顔が見れない

残念に思って身動ぎすると、微かに手が触れた

伝わってくる、ニノの体温

触れていたら起こしてしまうかも知れない

なのに寄り添った手を動かせない


握りたい…

隣に俺がいるよ、って

安心して眠っていいんだよ、って

…何考えてんだ、俺は

そんな事をしたら起きちゃうかも知れないのに…


頭では分かっているのに

指が自然と動いた

恐る恐る、ゆっくりと…

そっと軽く指先を握る


ピクッ…と僅かに動いて

また微動だにしない


良かった

よく寝てる…

とにかく今はそれが凄く嬉しい


今は俺の気持ちなんてどうでもいい

そんな七面倒くさい事は後回しにして

今夜はニノが俺の隣で安らかでいる事

それだけを考える事にして

俺はゆっくりと目を閉じた



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