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旅は続くよ

第10章 当たりだよ

Sside



仕事の飲み会から帰ってくると

智くんだけがコタツで焼酎を飲んでいた

S「あれ、智くんだけ?」

O「皆まだ出掛けてるよ」

ニノと雅紀は一緒に遊びに行って

潤も研究で今夜は遅くなるらしい


S「晩飯1人だったの?」

O「いや。俺も外で飲んできた」

S「なんだ。そんでまた家で飲んでんのかよ」

O「なーんか寂しくってさぁ…」

フフッ…と智くんが眉を下げて困ったように笑う

O「ちょっと前まで当たり前だったのになぁ…」

智くんの呟きに、俺は苦笑いするしかなかった


S「なんか…2人だけだったのが随分前みたいに感じるね」

俺がコタツに座ると

O「飲む?」

S「じゃあ1杯だけ付き合う」

焼酎のグラスを2人でカチンと鳴らし合わせた


S「こうやって2人で飲むのも久しぶりだね」

O「賑やかになったからな~」

S「リビングには大概ニノいるしね」

O「フフッ、おかげで翔ちゃんもいる」

S「…別にニノがいるからって訳じゃないよ」

O「じゃあ、そういう事にしといてやるよ」


智くんはチビッと焼酎を飲んで、
フゥ~と深く息を吐いた

O「何かココで1人で酒飲んでたらさ…
いろいろ思い出して…驚いちゃった」

S「驚いたって、何が?」

O「久しぶりだったからさ、昔の事いろいろ思い出すの…」


智くんが何を言いたいか、すぐに分かった

両親が亡くなって、2人きりになって

俺達はよく2人で酒を飲んだ

まるで答え合わせをするように思い出話をした

懐かしんでた訳じゃない

1人で思い出してると、つらかったからだ


思い出さないようにしても無理だったんだ

両親を失った悲しみはいつも心の中にあって

何も親孝行できないままだったのが悔しくて

仕方ないと分かってても、どうしようもなくて

俺達は互いに吐き出しあうしか術を持っていなかったんだ


O「あっという間に5人でいるのに慣れちゃったからなぁ…」

S「そうだね。まだ半年も経ってないのにね」

O「正月もずっと一緒にいたもんね」

S「だって…帰るとこねーじゃん」

O「まあ、そうだ…。そうなんだけどさ…
…楽しいよ、俺は」

S「うん…。俺も楽しい」

O「ずっと…一緒に暮らしていければいいなぁ…」

うん…、と頷きながら

俺はニノの顔を思い浮かべてた






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