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旅は続くよ

第12章 無理

始めは恐々と話しかけてたニノも

ニコニコと愛想のいいオーナーと打ち解けてきて

…なんだ、俺の出番はなかったな

カウンターの隅に座って、ニノの仕事ぶりを眺めてた


人懐っこい笑顔を見せてオーナーと話す様子は

最初の緊張が嘘のような取材ぶりだ

オーナーが出してくれる料理やカクテルを

オーバーに褒めながらカメラに収めて

カウンターに座る客ともいつの間にか楽しげに喋って

雑談しているようで、ちゃんと記事になりそうな言葉を引き出してる


イキイキしてんなぁ

普段、かったるそうな事言ってるけど

この仕事が好きなんだな…

こんな表情を見るのは初めてだ

なんか…、また好きになっちゃうな

そんな事を考えながら、ずっと眺めていた

クルクル表情を変えながら楽しそうに話すニノを見てると飽きなかった



結局、1時間ばかりの取材の後

すっかりニノを気に入ったオーナーに勧められるままに

オリジナルカクテルを何杯かご馳走になって

店を後にした時には、外はすっかり暗くなっていた


少し酔ったのか、ニノはハシャいじゃってて

N「なんかサッパリしたの飲みた~い」

道端の自販機でウーロン茶のペットボトルを2本買って

2人で飲みながら歩いた


夜風が微かに潮の香りを運んでくる

N「あれ…、海近い?」

S「うん、割とね。歩いて5分くらいかな」

N「行ってみたい」

まだ帰りの電車に困るような時間じゃない

ニノを案内しながら暫らく歩くと

防波堤沿いの細い道に出た


N「あっは!う~み~!」

胸程の高さのコンクリート壁から身を乗り出して楽しそう

N「真っ暗だ~」

S「まあね、夜だから」

N「なんだよ翔ちゃ~ん。ちゃんと飲んでたの~?」

S「飲んだっつってもアレくらい…って、おいっ!」

ニノがヨイショと防波堤に乗り上げて

僅かな幅のコンクリートの上に立ち上がった


だいぶ酔ってんのか?

弥次郎兵衛みたいに両手を水平に上げて

ヨロヨロ歩き出す姿が危なっかしい

S「降りろよ!危ないから」

N「だ~いじょうぶでぇすよ~」

全っ然大丈夫そうじゃねんだけど…

見てるコッチがハラハラするよ


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