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旅は続くよ

第15章 それでもキミの為に

N「あのさ。…そこまでしなきゃダメ?」

S「…どういう事?」

N「仕事探せって言うけどさ…
仕事頑張って、長生きして…。
そしたらこの先、何かいい事あんの?
頑張ればいい事あるなんて保証、何処にもないじゃない」

S「だからって、このままでいいのか?」

悲しい過去に囚われて小さく蹲ってるニノ

お前は何も悪い事なんてしてないのに


S「俺はそうは思わない。
だって、今仕事探さないでいる時間に
何かニノの中で解決したか?」

俺の反論に、ニノはどんどん俯いていく

それでも俺は言わずにはいられない


S「仕事すりゃいいってもんじゃないかも知れない。
ニノにとって嫌な事忘れさせてくれるのは、仕事じゃないかも知れない。
そしたらまた探そうよ。
何度だってやり直せるんだからさ」

N「…翔ちゃんにはわかんないよ」

S「ああ、わかんないよ」

きっとそう言うと思ってた

俺にもそんな時期があったから


S「でもニノだって俺の事わかんないだろ?
俺だってニノと似てるっちゃ似てる境遇なんだ」

N「…え?」

S「俺の母さんがシングルマザーだっってのは前に話したよな

俺はさ、認知もされてない私生児なんだよ」


認知されないって事は、父親が俺を自分の子供と認めない事だよな

自分が不倫の結末だと知った時

俺はまだ高校生で

どうにも自分の母親が淫らで汚らしい感じがして

一時期母親を避けるような行動を取っていた


母親だけじゃない

自分は祝福されて生まれてきたんじゃないんだって

だったら生まれて来なければ良かったんじゃないかって

自分自身が汚らしいものに思えて

彼女が欲しいだの、童貞を捨てたいだのホザいてる同級生までが呑気に見えて疎ましかった


『翔はヒマなんだな』

そう言って笑ったのは大野の父さんだった

『店の手伝いしろ。志望校も1つランクを上げなさい。
そうじゃないと大学進学させねーぞ?』

無茶苦茶な言いつけに抵抗を試みたけど

父さんの言葉は我が家では絶対的な力を持っていて

負けん気ばかり強い俺は、我武者羅に頑張る事で反発しようとした


家の手伝いと高望みな受験だけで一杯になった頭からは

いつしか嫌な思いは消えていて…

俺を一生懸命応援してくれる母さんの姿が映っていた

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