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「前に私が熱出して大野さんと松本さんに病院に連れていってもらった時の診察代。」

そう言って、アキさんは俺の手に万札を握らせた。

「転職して生活も少し楽になって…、そのお金返しても大丈夫になったから。」

「そう…。」

俺は手の中の万札を見つめた。

「それに、自由診療のこと大野さんに教えてくれたの、櫻井さんでしょ？電話で大野さんが『翔ちゃん！翔ちゃん！』って言ってたから。」

アキさんはまた頭を下げて『ありがとう』と言った。

「だから、もういいって…。」

俺はアキさんの手を握ると、万札を突き返した。

アキさんは目を丸くして驚いた顔をした。

「今度、智くんも連れて来るから、自分で返せよ。」

アキさんはポカーンとした顔をした。

「オジサン、連れて来るの？」

「ああ。」

「私、オジサンと会ってもいいの？」

「だから、ああ！お、俺の取材の付き添いだよ！」