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アスタリスク【ARS.O】

第1章 今年いちばん寒い夜

「え…。」

俺が顔を上げると、女の人は少し驚いた顔をした。

「家出の高校生かと思ったらオジサンじゃん。」

「オジサン…!?」

女の人は、俺の前にしゃがみこんだ。

年の頃は、二十代半ばくらいだろうか。

袖のすりきれたベンチコートを着ている。

「住み込みの仕事でもクビになった?こんな寒空にその格好じゃ、凍え死ぬよ?」

「……。」

黙りこんでいる俺を見ると、女の人はふっと笑って立ち上がった。

「おいでよ。」

女の人は、すたすたと歩き出した。

俺は、あわててその後ろをついていった。

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