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アスタリスク【ARS.O】

第1章 今年いちばん寒い夜

だんだんとコタツが暖かくなってきた。

寒さでしびれかけてた手足が、溶けるように暖まってきた。

「あったけぇ…。」

つい声が出た。

「オジサン通りこして、オジイチャンね。」

そう言いながら、女の人は俺の前に湯気のたつマグカップを置いた。

「悪いけど、ミルク切らしてて。」

マグカップの中は砂糖が入ったコーヒーだった。

ひとくち飲むと、胃の中から熱が伝わり体がじんわりと暖まった。

「お腹すいてる?」

そう聞かれて、俺は夕食がまだだったことを思い出した。

女の人がベンチコートのボケットから何かを取り出してコタツに座った。

あんパンだった。

「給料日前で、これしかないんだ。」

女の人は、値下げシールのついたあんパンの袋を破ってあんパンを半分に割った。

「はい。」

俺の手に、そのあんパンをのせた。

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