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アスタリスク【ARS.O】

第1章 今年いちばん寒い夜

「あんがと…。」

俺は礼を言うと、あんパンをひとくちかじった。

女の人も、コーヒーを飲んであんパンを食べた。

半分こしたあんパンは、あっという間になくなった。

あんパンの糖分が、さらに俺の体を暖めた。

「あの…、何で?」

俺は、女の人になぜ俺を拾ったのか聞いた。

「何でって…。あんなところで死なれたら困るよ。私、あのコンビニよく行くし。」

女の人は、ハハッと笑った。

「…それに、なんだかアンタ捨て猫みたいだったから。」

捨て猫。

俺はそんな風に見られてたのか。

女の人は、頬杖をついて俺のことをじっと見た。

「とりあえず、今夜は寒いからここでビバークしていきなよ。」

そう言って、また笑った。

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