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☆ラリマーの扉☆

第9章 捨てられし王女は

灼熱の村、XX村は
夜が明けようとしている───…

夜明けの空は冥府の空になる。

空全体が脱皮しているかのような
移り変わりで
そして絶妙なコントラスト────…

地位無き王女 クレディリスは

彼のもとに戻れれば…と
ベッドの上でもどかしい思いをしていた。

「アン…ディルス」

帰ってくるわけ無いじゃない

返事なんて…

「貴方のそばにいたいわ…」

泣くのはもうやめよう
ただ…気持ちだけは口にしたくて。

「去ってしまってごめんなさい…
何もない王女だけど、許して…」

また戻ってきていいのかな…


つぶやいた後、クレディリスは天井を見上げた。

何も言わずに。

その一点をただ眺めるばかり。

……

また眠ろうとした時


「クレディリス、おはよう」

この村の誇り高き姫、琥珀さきえが起きた。

「おはよう、小さなお姫さま!」

「ちっ…ちいさな姫っ!?」

さきえは驚いた。

「あぁごめんなさいね」

クレディリスが口に手を当てて笑う姿は
美しさが感じられる。

「いやいいんじゃよ。それより今日は…
お願いしたいことがあるんじゃ!」

「まぁ、何かしら?」

「畑を耕して欲しいんだ」

村にはかかせぬ、畑。

「あ…ごめんなさい。
耕すのはどうやって…?」

王国育ちのクレディリスなので
畑とは無縁の存在。

「……ごくり。大丈夫さ。教えるから」

さきえは腰に手を当て、クレディリスの顔を見る。

「おいで」

クレディリスはさきえに従う。


さきえの家から出ると
昨日と同じ、快晴の空。

「…わぁ」

まぶしい太陽がギンッと照る。

暑くてヘトヘトになりそうだ。





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