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プリンス×プリンセス

第80章 決別

途中で果樹園に寄って、桃の花を一緒に見て…

あの時の思い出は、胸の奥が温かくなるものだ。

「まさかまた婚約者が待ってたりするんですか?」

冗談混じりで話すのに、テリオス様の反応は芳しくない。

「いや。エストラーザにも帰らないから」

笑いもなく返された。

「……え」

フェールロコノへ一緒に帰らない。

エストラーザにも行かない。

「だったら何処へ…」

「まだ決めてないんだ。行きたい所がいくつかあって」

動きの止まった僕の手を外して、テリオス様が僕を見上げる。

「どうせなら全部回ってみるかな」

ハハッと笑うその顔は、いつも通りの笑みだった。

「旅に出る…?お一人で?」

「うん、そうそう。社会勉強?」

そう言って、椅子から立ち上がると、腕を伸ばして体を延ばし

「俺もさ、色々と知らなきゃいけない事があるからさ」

ニッと笑う姿は晴れやかに見える。

「そう…なんですね」

そう頷くけど、何だか腑に落ちない。

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