テキストサイズ

プリンス×プリンセス

第84章 そして…

その流れで、母上の背の半ばまで伸びた長い髪が、僕の顔をふわりと撫でた。

「あ」

何の気なしに漏れた声に、母上は機敏に反応する。

「ごめん。目に入らなかった?」

屈みながら僕の顔を覗き込んで、怪我がないかを心配してくれる。

「大丈夫です」

たかだか髪が顔に当たっただけなのに。

母上を安心させたくて、その一房を指に絡め取り、キスを落とす。

「母上の髪は柔らかいから。くすぐったいくらいですよ」

唇を髪に当てたまま見上げれば、母上は戸惑うような顔をしていた。

「マックスは…どこでそんな言葉を覚えたの?」

あれ?

咎めるような言葉に、気に入らなかったのかと首を傾げた。

「これくらい社交辞令だと。カムリが」

いずれ公の場で諸外国の王女と交流があるだろう。

その時に粋に対処できるかで、自分の付加価値が変わると父上から聞いた。

そこでカムリに『粋な対処』について具体的にどうしたらいいのか訊いたら、色々教えてくれたんだ…けど。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ