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プリンス×プリンセス

第17章 妻の役割

「待たせたな」

その声に振り向くと、ディオが書類を一纏めに積んで、ペーパーウエイトを置いた所だった。

「あ、コーヒーですね!!」

急いでカップにコーヒーを注ぎ、ソーサーに載せる。

「お砂糖とミルクは…」

「そのままでいい」

コーヒーはブラック派なのね。

そう思った時、ディオの好みとかを何も知らない事に改めて気付かされた。

この人の事を何一つ知らないのに、私はこの人の妻なのだという事も。

「どうぞ」

ディオの前にコーヒーを置く。

私が注いだコーヒーを、ディオが口にする。

それだけの事なのに。

その口元から目が離せないのはどうしてなのかしら。

ディオはコーヒーを一口飲んで、ふうっと息をつき、私に視線を向けた。

「お前は飲まないのか?」

「あ…私は…」

首を横に振って断ると

「コーヒーが苦手なら、ハーブティーか何かがあったはずだか」

「いえ、大丈夫です」

緊張なんてする理由はないのに、喉を通る気がしない。

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