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プリンス×プリンセス

第21章 底無し沼

ディオチェスター様の執務室へ向かっていると

「きゃっ!!」

厨房から小さな叫び声が聞こえた。

誰だ?

怪我でもしていると後々厄介な事になる。

ため息をつくと、厨房の様子を見に行った。

「どうかしましたか?」

厨房を覗けば、何故かそこにはティアナ様がいた。

「…何をされているんですか!?」

咎めるつもりはなかったのだけれど、ティアナ様が包丁を手にしているのを見て、口調が強くなってしまった。

ティアナ様は、俺の声にびくりと体を竦ませると

「いえ…あの…」

うろたえたように視線をさ迷わせた。

ティアナ様の側に寄り、包丁をゆっくりと奪い取ると

「まったく…怪我をしますよ?」

安堵の息をつくと、ティアナ様が眉を寄せた。

「これでも料理くらい出来ます」

「では、さっきの叫び声は?」

「あ…聞いていたのですか?」

どちらかと言えば聞こえてしまったのだが。

腕を組み、じっと見つめていると

「グラスを落としそうになっただけ…です」

理由を小さな声で話した。

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