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プリンス×プリンセス

第21章 底無し沼

グラス?

ティアナ様の手元を見れば、ロングタイプのガラスのグラスとレモンが置かれていた。

「これで、何を?」

「テリオスに、何か飲み物を…と思って」

ティアナ様は俺をちらりと見上げると、慌てて言い訳をし始めた。

「冷蔵庫を見せてもらいましたが、飲み物は何も置いてなくて…そうしたらレモンが目に入ったから… 」

レモンを使って、飲み物を作ろうと?

組んでいた腕を解くと、小さく息を吐いた。

まったく…

お姫様なのに、そんな事をしなくても。

「下のものに命じて頂ければ」

「いえ。私がしたかったから」

ティアナ様は顔を振って、泣きそうな表情になった。

「テリオスにはいつも迷惑をかけていて…私が出来ることはこれくらいしか…」

ティアナ様は一旦目を閉じると、笑みを浮かべた。

けれど、強がっているのは明らかで…眉が下がっている。

「分かりました」

何をそんなに不安に思っているのだろう?

だけれども、それくらいの望みなら叶えてやりたくなった。

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