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プリンス×プリンセス

第30章 私じゃない

「ワインもジュースも、皆喜んでいましたよ」

シルフィの言葉に笑みを浮かべた。

「そう。それは良かったわ」

「それに…」

シルフィは目を細めると

「ディオチェスター様が城の者全員へお土産を下さったのは初めてで、皆さん驚いていました」

意味ありげなその口調に、シルフィをまじまじと見つめた。

「そうだったの?」

そう言えば、ディオはあの時『馴れ合うな』と言っていたわね。

馴れ合うって意味は、特定の誰かだけ贔屓をするなって事だと思っていたのに。

ディオにとっては、従者に贈り物をしたりするのは不要な事だったのかしら…

だったら余計なことをしたのかも。

目を伏せて落ち込んでしまうと、シルフィは明るい声で話を続けた。

「御結婚されると、そういった所も変わられるのかとか、ティアナ様のお心遣いじゃないかとか…」

「え?」

急に名前が出て聞き返すと、シルフィが慌てて口元を押さえた。

「あ…申し訳ありません」

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