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プリンス×プリンセス

第32章 一番の友達

「カムリ、来いよ」

俺の誘いに眉を下げると、おっちゃんに会釈をした。

おっちゃんは俺たちにヒラヒラと手を振ると、事務所の奥へ姿を消してしまった。

「お優しい方ですね」

「おっちゃん?…厳しい時もあるけどな」

俺が先に歩き、目当ての場所に進んでいく。

入り口近くはビニールハウスが点在していて、その脇を抜けて奥へ入っていった。

ゲートを抜けると、ぶどう畑がある。

「カムリ、木には触るなよ?後でめっちゃくちゃ怒られるから」

「は、はい!!」

緊張したように歩くカムリの姿に笑いを浮かべると、その間を進んでいき…

「甘い香りがしますね」

カムリが周りを見回しながら深呼吸した。

あ、さすがに気付いたか?

「うん、それが目当て」

「?」

俺の言葉にカムリはキョトンとした。

「足下気を付けて。石が多いから下向いて行った方がいいぞ」

「はい」

カムリは素直に下を向いて歩いている。

本当は目隠ししたいんだけどな。仕方ないか。

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